祖父

親父の親父。

先ほど、祖父が逝去された。


海軍艦艇に乗り込み戦争へ行った祖父。
戦闘機の機銃掃射を何往復も受けた戦艦の甲板は、共に応戦する戦友が多数、撃たれバタバタ倒れていった。
足元、自分のほんの一寸先を、縦に銃弾の連射が浴びせられる。


奇跡だったよ。
俺に弾が当たらなかったの。
必死だった。
必死って分かるか?

こっちは撃っても小銃じゃ飛行機にゃ当たらないんだよ。


ついに船は沈められ、俺は海へ飛び込んだんだ。

陸地なんて見えない。どっちに泳いで行ったら良いか分からないし、
気が遠くなるほどはるか先まで泳いで、何とか帰ってきたんだ。


−小さい頃、正月にだけ会う祖父に、こたつに入りながらこう話されたのをすごいはっきり覚えてます。


たぶん一字一句相違ない。
だって、小さいと言ったって俺が中学生の頃の話し。さすがに記憶は明瞭だ。


今思うと、お年玉もらってただ喜んでた自分がほほえましい。


そういや親父からも
「海に出たら、沖に出るのは簡単だ。けど帰ってくるのには倍の力使うと思え」
って言われたっけ。


防空壕に入って分かれ道。右行くか。左行くか。
我が子が右に走ってった。
なぜか分からないんだけど、あわてて引っ張り戻し、左の洞へ進んだ。

だんだん近づく焼夷弾の音。
ふと振り帰ったら左手後ろには砂埃がたっていたそうだ。
自分の前を走って右に行ってしまった幼児を抱えた見知らぬ母。

二度と見る事は無かったそうです。


普通、先行く人がそっちへ向かえば続いてそっちへ逃げようとするのに。

けど、なぜか左へ祖母は走った。


そんな話を、母方からも聞きました。


いろんな話を聞かせてくれてありがとうございます。